続き |
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| 「こりゃあ……凄いな……」 「サナサナ……これは気合入りすぎじゃない……?」 「ふむ、中々に大した腕よの」 お昼休み、僕たちが早苗ちゃんのお弁当を空けた瞬間にそれぞれから感嘆の声が漏れた……ってちょっと待ってください。 「……なんで先輩がここにいるんですか?」 「む、何か問題があるかの? あるというのならここから去るが」 発した言葉に対する認識が壊滅的にずれていた。流石は先輩といったところか(ちなみに、後ろで立上さんがこめかみを抑えているのが眼に入った。……苦労してるようである)。 「……いや、そういう事じゃなくて。 なんで僕がこの場所を教えていないのに先輩がこの場所を知っているのかな、と」 再度発した僕の問いに、先輩はいつも通り扇子で口を隠した意地の悪い笑顔を浮かべて答えた。 「なに、ヌシの友に居場所を尋ねたら快く教えてくれたわ」 チュウタツの野郎、存外に口の軽い……とりあえず、昼休みが終わったら問い詰めてやる。 「しかし、これは実に手の込んだものだのう。よければ、ワシにも一口……」 「ダメです」 みなまで言い切る前に、早苗ちゃんは先輩の申し出を切って捨てる。 僕は構わないんだけどなぁ…… とはいえ、ご馳走されている立場としてはシェフの意向に逆らうわけにも行かないので、とりあえず僕は目の前のお弁当に箸を伸ばす事にする。 早苗ちゃんのお弁当は昨日の刀部さんの純和風の物とは対照的に、少量のパスタにハンバーグ、さらにはポテトサラダといった洋風のお弁当だった。 僕がその味に舌鼓を打っていると(刀部さんのお弁当に勝るとも劣らない美味しさだった)、先輩が再び早苗ちゃんに尋ねる。 「のう、やはりワシに譲っては……」 「ダメです」 やはり一言で却下だった。 「……サナサナ、なんか怖い……」 鈴川が微妙に怯えた様子で呟く。……珍しく同感だ。 「ふむ、それでは仕方がない」 先輩が残念そうな様子で、早苗ちゃんの言葉に従った。 随分とあっさり引き下がったなぁ、などと思いつつ僕はハンバーグの最後の一切れを箸でつまむ。 そして、それを口に運んだのとほぼ同時。 先輩が邪悪な笑みを浮かべて、僕の方を向いて、言った。
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06/20(火) | トラックバック(0) | コメント(0) | フォーカード | 管理
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