神降臨の成果 |
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| そんなわけで久しぶりのSS更新。 長くなったので今回は二つに分けて。
僕は詫びの意味もこめて、刀部さんのお弁当から手をつける事にした。 そう思って弁当の蓋を開けて、そして驚いた。 そこにあったのは、おにぎりにきんぴら、醤油の染みた煮物に卵焼きといった実に美味しそうな純和風の料理の数々だった。 落としたせいで若干偏りは出来ているものの、彩りの美しさも見事なものである。 とはいえ、そのまま見ているだけというのも間抜けなのでまず箸を手に取って弁当に向かい合う。 「……………………」 「……………………」 箸を持つ僕を刀部さんがじっと見つめている。 ……大変に食べづらいのだが、さっきの例もあるのであえて気にしない事にして、煮物から箸をつけ始めた。 一口、二口と味わうと、口の中にえもいわれぬ旨味が広がっていく。 食べた事は無いけれど、きっと一流料理人と呼ばれる人々の料理はこういう味なのだろう。 そう思わせるほど、見事な味の弁当だった。 「うん、凄く美味しいよ、刀部さん。わざわざ作ってくれてありがとう」 すぐに全部食べたい気持ちを抑え、僕は刀部さんへの礼を言った 「……いえ、お役目ですから」 しかし、刀部さんから返ってきたのは短く返事だけだった。 ようやく調子を取り戻してきたらしい刀部さんの対応に僕は思わず苦笑する。……刀部さんの頬に少し朱が刺してるように見えたのは、たぶん気のせいだろう。 少しそんな事を思った後、僕が再度箸を動かしそうとすると脇から声がかけられた。 「えっへっへー、先パイ。私たちもご相伴に預かっていいですか?」 僕の食べっぷりに触発されたのか、鈴川が僕のお弁当をねだってくる。 「ん、僕は別に構わないけど。刀部さんも良いよね。」 「……あ、はい。殿がよろしければ」 一瞬戸惑ったような顔をしたが、すぐに刀部さんから快い返事が戻ってきた。 「ありがとうございます、刀部先輩!」 鈴川は芝居っけたっぷりに敬礼をすると、自分の箸を手にとって卵焼きを口に入れる。 すると、鈴川は突然立ち上がって叫んだ。 「う・ま・い・ぞーーーーーーーーーっ!」 「……それは分かったから、座って静かに食え」 僕はせっせと箸を動かしながら、鈴川をたしなめる。こんな事で驚いてたり怒ってたりしてたらこいつの先輩は出来ない。 「ぶー、先パイノリが悪いです。美味しいもの食べたら涅槃に旅立ったりお城と合体したりするのは常識ですよ?」 膨れ面で無茶苦茶な事をいう鈴川。というか、お前はどこかの料理会の会長か。 「あ、あの……私も、その……お、お弁当、頂いていいですか?」 「もちろん。ほら、好きなのとって良いよ」 僕はそう言って、早苗ちゃんにお弁当箱を差し出した。 「あ、ありがとうございます……」 早苗ちゃんは、僕と刀部さんに礼をしてきんぴらに箸をつける。 上品にニ、三度顎を動かした後、喉を鳴らす。 「凄く美味しい……」 驚いたような口調で、早苗ちゃんはお弁当を見つめた。 ひたすらにじっと刀部さんのお弁当を見つめていた。……よほど驚いたのかな? 「……負けない」 僕が意識を再びお弁当に戻した直後、早苗ちゃんが呟いた。 「ん、何かいった早苗ちゃ……」 しかし、僕はその言葉を聞き逃してしまったので、聞きなおそうと顔を上げて……驚いた。 早苗ちゃんは僕の眼をじっと見据え、身を寄せてきていた。 「鬼気迫る」とでも表現するのがふさわしい早苗ちゃんの様子に、僕は思わず後ろに倒れかけた。 「武屋先輩、私、明日もお弁当作ってきてもいいですか?」 「あ、う、うん。もちろん、喜んで……」 早苗ちゃんの迫力に気圧されて倒れこみそうになりながらも、どうにか答えを返す僕。 「あ、ありがとうございま……すぅ!?」 僕の答えを聞くと同時に、早苗ちゃんから妙な迫力が消えていった。 同時に、驚いた顔をしたかと思うと、弾かれたよう一気に僕から距離を取った。先程までの迫力が嘘のようだ。 ……というか、さっきのやり取りのどこに早苗ちゃんの心に火をつけた所があったんだろう? 解けない問いに頭を悩ませながら、僕は昼休みの残りをお弁当との闘いに捧げなおした……
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03/25(土) | トラックバック(0) | コメント(0) | フォーカード | 管理
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