まずは絵をご覧ください |
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| わが盟友夏野さんとチャットで相変わらずの馬鹿話を繰り広げてる最中、この絵を描かれたのに反応して思わず俺が即興で作り上げたプロローグ風のブツ。執筆時間は一時間くらい。 俺は続きを書きませんが、続きを書きたい奇特な方はご自由にどうぞ(笑) それではお楽しみください
ピンポーン、ピンポーン。 夜の帳が世界を完全に覆いつくす午後九時過ぎ。 玄関のチャイムが俺を急かすように鳴っている。 僕はその音に誘われるように玄関に向かい、扉を開くと、そこには一人の少女が立っていた。 美少女と分類できる美しい顔立ちだった。しかし、そこに感じたのは大きな違和感。 理由は二つあった。 一つ目の理由はそこに宿った強い意志。敵意ではないが、並々ならぬ覚悟の感じられる瞳が僕を射抜いていた。 そして、もう一つの理由は……腰に下げた普通の人間なら持ち歩かないような、長い棒状の物体。 そして、僕はその物体に見覚えがあった。──見間違いであれば嬉しい、と思った。 「殿、如何なされました?」 僕の沈黙を不審に思ったのか、少女が僕に声をかけてきた。 「え、あ、いや、なんでもないです……って……殿?」 聞きなれない言葉をかけられ、僕は思わず聞き返した。 「はい、古の約定に基き、刀部(とうべ)の要(かなめ)、ここに馳せ参じました」 彼女はそこまで言ったかと思うと、突然傅いて僕に頭を垂れた。 「…………はいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」 あまりの事態に脳味噌の処理能力をオーバーした僕は、思わず叫んでしまった。……いや、無理もないよね?
「で……その、刀部さんは……僕のご先祖様とした約束を守りに僕の所に来た、とそういう事でいいのかな?」 「『要』で結構です。御問いになられた件については、殿の仰るとおりと存じます」 彼女の出してくれたお茶を飲みながら、僕は彼女についての大まかな話しを聞くことが出来た。(最初は僕が入れるつもりだったのだが、彼女が「殿にそのような事をさせるわけにはいかない」と強弁した為彼女に入れてもらう事になった) 曰く。僕の家は江戸の時代に小さいながらも大名で、彼女の家はそこに仕える家老だったらしい。 だが、時代は変わり江戸の世が終わりを告げた時、彼女の家と僕の家は遠く分かれる事となった。 その時、当時の彼女の家の当主はこう約束したそうだ。 「時至らば、再び我等は殿の懐刀としてその身を捧げたらしめん」と。 そして、今年が彼等が約束したその年……という事だ。 僕が実際に関わってなければ良い話だと思うんだけど……その、なんというか、困る。色々と。 特に両親が長期出張に出かけてる今だと、こう、青少年的な部分において。 「えーと、刀部さん?」 「はっ!」 刀部さんは僕が言葉をかけると、ピンと背筋を伸ばす。一言一句も聞き逃すまい、そんな態勢だ。 うう、罪悪感がわくなぁ……。 「その、悪いんだけど、さ、えーと……僕の家もそんなに困ってないし、その……刀部さんの家が律儀に約束を守る必要は無いと思う、うん」 僕が言葉を選びながら刀部さんに言うと、彼女はよほどのショックを受けたらしくその場に崩れ落ちた。 「あ、違うから、刀部さんがダメとか、そういう話じゃなくて……」 「いいのです、殿。……不必要と仰せならば、それも致し方の無い事です」 僕が説明を試みようとすると、刀部さんは僕の言葉を遮って言葉を発した。 相当のショックを受けてる模様だった。……やっぱり言葉を選んだ方が良かったかも……。 僕がどう慰めたらいいものだか考えていると、彼女は床に座り込み懐から何かを取り出した。 何だろう、と思って覗き込み……思わず声を上げた。 「ちょ……ちょっと刀部さん! 小刀なんか取り出して何やってるんだよ!」 叫びながら僕は彼女の腕を取る。 「殿、お放し下され! 不必要とあらば私めがここに在り続ける理由は無用! どうかお情けを!」 「不必要だなんて言ってないだろ!?」 「ですが、先ほどは私に……」 「だからそれはそういう話じゃなくて……」 お互いに取っ組み合いながら口論する。 それが五分くらい続いただろうか。 「ですから、殿のおそばに居れぬならば私が在り続ける理由など……」 意固地な刀部さんに僕も血が昇ったのか、その言葉に思わず叫び返した。 「わかったよ! 僕の傍に居ていいよ! でも、僕の言う事は聞いて貰うからな!」 すると、先程までの抵抗が嘘のように彼女はその動きを止めた。 「……真でございますか」 喜びのこもった眼で僕を見る刀部さん。……流石にこんな眼で見られると僕も「ノー」とは言えない。 「う、うん、ホントホント」 照れ隠しに視線をそらして早口に言葉を返す僕。 「ありがたき……幸せ!」 彼女はそう言って平伏する。そんな彼女を見て僕は思う。 (こりゃあ……明日から苦労しそうだなぁ……) そして、それは……現実にそうなる事となった……
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01/03(火) | トラックバック(0) | コメント(0) | フォーカード | 管理
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